SUMIBITO

憧れの事務所

カテゴリ : 波の音 2018.06.06

その事務所は逗子の山の麓にある古い日本家屋の離れで、僕の尊敬する先輩の事務所だ。築年数もかなりのものだと思われる離れは、ところどころ床が傾いていたりする。辛うじて洋式の便器も時代を感じさせるアンティークのような便器でトイレにすら趣が感じれれる。

掃き出し窓を開ければ、庭に咲き誇った緑がすぐ目の前に。夏は暑く虫が入って来るし冬は寒い。そんな今の時代の流れとかけ離れた住居だからこそ、生まれて来るもの、気づく事がある。都内でアートディレクターとして第一線で活躍していた時とは違う、社会の仕組みから解放されたクリエイティブな物事。

その先輩との打ち合わせはいつも色々と考えさせられる。自分のライフスタイル、物の見方、お金について。

便利なもの、綺麗なもの、高価なもの、家、憧れるけど自分にとって本当に必要なものなのか?それを欲することで自分にとってもっと大事なものを見失っていないか。

この事務所にいると、社会の喧騒から離れゆっくりした、しかし濃密な時間を過ごすことができる。

自分にとって、色々な物事を気付かさせてくれるメンターがいると言うことはとても幸せなことだ。

いつか自分もこんな事務所で、色々なしがらみから解放され、ゆっくりと仕事がしたい。