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琵琶の季節に

カテゴリ : 住む人日記 2019.05.25

今朝、妻が下の階に住むご夫婦から琵琶をもらってきた。窓の向こうで背高く伸びた琵琶の木には、去年よりもたくさんの実がなり、色づき始めたことを知っていたので、お裾分けに、今年もまた季節が巡っていること、ご高齢のお二人も元気であるのだと実感する。毎年のことだが、この時期は特に忙しくてコラムを書くのも、更新するのもままならない。書き溜めたものを上げようと思っていたのに、琵琶のおかげで書き直している。

一昨日、撮影の合間に町歩きをしていると、ふと、この街並みから植栽が消えたらどうなるだろうかと思った。大多数の人は、家の植栽や街路樹を熱心になど見ていないし、その木があるから良いだとか、あまり考えないだろうと思う。私も忙しいとつい見過ごすので、責められたものじゃない。ただ急に全て無くなることを想像すると、なんだか途端に殺風景で不健康な景色に思えてならない。意識の外側で、風に揺れる木々や初夏の緑を人は欲しているのだと思う。

生きていると、毎日のことなので、必要なことでも忘れてしまうことが数多ある。だからなるべく、意識的に、目の前にあるそれが失くなることを想像するように心がけている。例えば妻がいなくなったら、、、とか、この服きれなくなったら、、、とか。当然、考えるだけで哀しくもなるけれど、目の前にあるそれを、私は必要としているのだと自覚できる。

もし琵琶の木がなくなったら、私はたいそう、寂しく思うだろう。
梅雨前だというのに真夏の暑さ、今夜から、私は瀬戸内海に向かいます。
またしばらく、留守の日々が続きそう。

みなさんも、どうかご自愛ください。
次の住む人は、11月発行予定。只今、熟考中。

 

住む人編集部 K.H