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便り 富山から

カテゴリ : 住む人日記 2019.06.19

本当は月に3回のはずが、すっかり一月が空いてしまいました。久々に昨日まで富山に行っていました。いつも住む人で印刷をお願いしている印刷所の本社が富山にあります。今回は別件でしたが、本番の印刷に立ち会うため、1泊2日の小旅行でした。北陸新幹線は金沢行きに乗って東京から約2時間。小京都と呼ばれる金沢とは違う朗らかな空気と、70年代頃の建築物がそのままに残された風景は、いつ尋ねてもほっとします。

さて、みなさんはきっと印刷にあまり興味はないだろうと思いますが、今日はあえて少しマニアックな印刷について書こうと思います。私たちは日頃、映画のポスターや広告・雑誌・書籍などあらゆるところで印刷物に触れていますが、実は日本の印刷技術は世界的に見てもトップクラスに発達していて、紙の種類も豊富です。そのためデザイナーや編集者、写真家はその力を借りならが様々な仕事を手がけ、それを見る人たちも自然とハイレベルな表現を享受してきました。

写真やデザインを印刷所に入稿したら、それがそのまま出てくると思いがちですが、そうではありません。一般家庭にもプリンターが普及したことで、印刷を簡単なことだと誤認しがちですが、それとは仕組みが全く違うのです。

印刷会社における印刷は、写真もデザインも全てをCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色に分解し、それぞれアルミ版に起こし、1色づつ刷っていきます。そのため4つの色を階層のように足していくことで完成されるので、版ごとに色を理解する必要が出てきます。

少し余談ですが、CMYの原色を全て混ぜると理論上Kつまり黒になります。(厳密には真っ黒ではないのでKインクが別にありますが)色は足すほど濁ります。一方でスマホやパソコンの画面はRGB(レッド・グリーン・ブルー)といって全てを足すと白になる仕組みなので、デジカメで撮ったRGBの写真を、印刷のCMYKで表現刷ること自体、とっても難しいことなのです。

それでもやはり、理想の色を追求してきます。
そこでプリンティングディレクター(PD)という、印刷の色を見る専門の仕事があるのです。PDは受け取った写真やデザインを様々な方法で調整し、私たちと一緒に何度かテスト(色校)に臨み、アルミ板を作る(下版)まで色が合うよう、ひたすら試行錯誤を繰り返します。そしてよやく決まった色味をもって、版を完成させて本番に向かうのです。

しかし、本番でテストした色が出ないことがわりとよく、あります。(じゃあなんのためのテストだ!)と思うかもしれませんが、テストに巨大な本番用の印刷機と高価な紙を使うことは、コストを考えると普通はできません。そすると本番で使う紙・機械・インクがテストと異なるのです。(もちろんそれも顧慮してテストするのですが)結果だけを見て、理想と違う!!と短絡的に判断するのではなく、思い通りにならない理由と必然を知っておく必要があるのです。

そして紙はと言うと、新聞紙が灰色で文庫本はオフホワイトなように、紙はそれぞれ白色度が異なり、さらに赤白い、青白い、黄白い紙が存在するので、想像以上に地色に強く影響を受けるのです。

ということで、今日はここまで。
次回は、これまで書いた違いに加えて、面つけによる影響と、色が合わない時になにをするのか書こうと思います。

 

 

住む人編集部 K.H