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ほんものを見る

カテゴリ : お山生活 2018.01.15

映画「人生フルーツ」をご存知の方は、
彼らの素晴らしい暮らしを知っているだろうが、
私は、数年前にとある雑誌の記事をきっかけで知って、最近になって
「ときをためる暮らし」という本を読んだだけで、まだ映画を観ていない。

ご主人は、アントニン・レーモンド事務所にも在籍していたこともあり、
彼の理想哲学である「シンプル・イズ・ベスト」の思想を受け継いで、
レーモンド夫妻の自宅兼アトリエをモデルにした自邸を建て、そこで
キッチンガーデンを作りながら、暮らしている。
奥様のつばた英子さんのキッチンガーデンは本格的で、
彼らの豊かな暮らしに憧れる人は多いはず。
ご主人修一さんの言葉で、私が一番心に留まった言葉がある。
「本当の豊かさというのは、自分の手足を動かす暮らしにあると思う」
というのは、言い得て妙。
こう言われてしまえば、単純なことで当たり前と捉えるかもしれないが、
私がコラムで言いたかったことも、結局のところ、
このことなのだと腑に落ちた。
お金を払って、贅沢がいくらでもできる暮らしよりはるかに、
食事にしても、道具の扱いにしても、ものごと手間暇かけて
自分で動いてつくりだす暮らしこそ、
実のところは、「本当の豊か」と言えるのではないだろうか。
だからこそ、この映画が今まさに注目を浴びているのだと
私は、思う。

とはいっても、忙しい年代が、自らの食卓を賄えるほどのキッチンガーデン
までもつことは、なかなか難しい。
本当の豊かさに気づかされても、それが実行に移せない
もどかしさを感じながら、
せめて家族の食事だけでも、丁寧に作りたいものだと
改めて思うのが精いっぱいだろう。私もその一人だ。
つばた夫婦は、本当になにからなにまでよく作る。
きちんとした食事こそが、自分たちの明日の体を支えていると
英子さんは言う。
私も常々、今自分がきちんと食事を摂ることは、
10年後の自分のためだと思っていたので、とても共感する。
また彼女の料理は、バラエティーに富んだメニューで、
90近くのご婦人の発想から出たものかと、とても不思議に思ったが、
それは、彼女の幼少期の育ち方に関係していて、
私が関心をもったのは、まさに英子さんのご実家の教育でした。

英子さんは、200年以上続く造り酒屋を営むご実家で、常に良質なものに
囲まれて育ってきてる。そして、
「物を買うときは、次の世代に伝えられる、いいものを買いなさい。
安物は、絶対買っちゃいけない。」という実家の教えがあった。
つねに一流のものを見なさいと、育てられてきたわけです。
なので、もちろん小さなころからいいモノを見て、触れて、食べて、
育ってきている。
これは、お金があるなしという話ではない。
本当にいいものは、手間暇もかかり、素材もよいから高いのは、
ある意味当たり前であって、それらを知っているということは、とても
大きな宝となる。
その原体験があるからこそ、はじめてモノの良し悪しがわかる。
彼らの暮らしは、畑を中心にしたシンプルな暮らしが素敵なだけではない。
そもそもの暮らしの本質というか、本物をしっている人たちだからこそ、
拘り抜いた暮らしというよりは、もはや「生き方」がそこにあったのだと。
お金があるから豊かなのではなく、心が豊かであるからこそ暮らしは
良質なモノになっていく。
そんなことを感じ取れる1冊に出会った気がした。
映画を観るチャンスがある人は、是非映画も合わせて観てみるといいかもしれない。

今日は、この一冊のご紹介でした。