SUMIBITO

南国から

カテゴリ : 住む人日記 2018.01.10

新しい年を、無事に迎えることができた。
昨年に感謝しながら、今年も励んで行きたいと思っている。

年始は石垣島と竹富島で過ごした。さして南国は好かないが、季節外れの生温かい風は心地よく、干潮時には河口から登ってマングローブの原生林を歩いた。頬をかすめる季節外れの生暖かい風は、一足早く春の錯覚をよぶ。
どこを観光するでもなく、窯元を覗いたり、何か面白い民芸品はないかと探して歩いたり。あとはもっぱら、海岸で漂流物を集めて過ごした。

 帰りの機内では、柳宗理のエッセイを読んだ。気になる箇所、深く頷く箇所があると、ページの角を小さく三角に折る。
巻末、父への反発と尊敬、亡き後が綴られた節を何度か読み直すと、親と子は時に離し難い因縁で結ばれているのだと、ふと思った。

柳宗理の父は言わずと知れた民芸運動家の柳宗悦だから、反発しながらインダストリアルデザイナーになった息子と父の間には、複雑な思いが巡っていたことは、様々な文献で書かれている。そんな息子も、次第に父を尊敬するようになり、やがて思いも掛けず日本民藝館を継いだのだった。

私にはそこまでの体験は無いが、父に見せてもらったオーケストラやオペラといった類の音楽や、歴史的資料に一度は興味を持ちながら、それが恥ずかしく、または窮屈に感じて年頃には反発していた。
それでも今となっては、そこで培ったものが自分の根底にあることを強く意識させられる。

さて今年はどんな面白いことが起こるだろう。
毎年、ゆっくりめなスタートの年始に焦りつつも、興奮混じりの新年である。
どうぞ本年も宜しくお願い致します。