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師走と隣人について

カテゴリ : 住む人日記 2017.12.11

師走、と聞くと自然と心も体も慌ただしくなる。
今年中に終えなければならない仕事と、年明け早々に動き出す仕事と、一度にどっと押し寄せてくる。
それもまた風物詩のようで、嫌いではない。

さて、文句や不満を書き連ねていた引越しもどうにか無事に済んだ。その日中に荷解きを済ませ、既に居心地の良い住まいに育ってきた。一見、特に良い間取りとも言えず欠点も多い物件だったが、様々なところに見た伸びしろは誤りではなかったと一安心している。
中でも、リビングの隣に仕切りをもたず、一段上がって存在する4.5畳のカーペットの部屋は対流式ストーブと棚、大切にしている椅子と本を置いて、ゆったり時間を過ごせる場所になっている。
来客も、私たちも、何かにつけてこの場所に集まるから、きっとここが我が家の中心だろう。

鉄筋造の築40年の物件、音は抜けにくいのだが、なにやら微かに声が聞こえることがある。耳をすますと、上階の住人が歌っているのだ。その主は、良き頃合いに歳を重ねた綺麗な女性で、一人で住んでいる。
肝心の歌声は、高く美しく、どこか儚げでかなりお上手なのだ。選曲も抜群で、今の時期はラスト・クリスマスなんかを歌ってくれるから、音楽をかけずに聞き入っている。

下階の老夫婦は、ちょっと片付けが苦手な人のようだけど、とても優しい人だ。引越し前に床の敷き込みで夜まで騒々しくした時には怒られたけれど、謝りに行くと、とても朗らかな方だった。いつも二人でリュックを背負って仲良く散歩に出かける姿は微笑ましい。

そんな風に、私は隣人観察をしている。今の時代、近所付き合い確かに疎ましいが、どこかで彼ら彼女らの過ごす日々を愛おしく思っていることは、ここだけの秘密である。

今日はそんなことを、京都の綾部から届けて、終いにしようと思う。

 

住む人編集部