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100年と民芸

カテゴリ : 住む人日記 2017.09.09

駒場東大前駅の改札を出ると、右手に緩やかな登り坂がある。秋の涼しい風が木々を揺らすそばを、国際高校に通うであろう学生たちが英語で話しながら賑やかに歩いている。妻と、自分たちも昔はあんなだったよねと話しながら、駒場の閑静な住宅街を進むと、日本民藝館がある。私は年に4〜5回、できるだけ西館(柳宗悦の自邸)の公開がある土曜日を選んで足を運ぶのだ。確か初めて訪れたのは、あんなだったと話した、17歳とかそれくらいの頃だった。

数日前から始まったウィンザーチェアの企画展は、自分がつい最近、古いウィンザーチェアを買ったこともあり、いつも以上に食い入るように見つめた。18世紀〜19世紀の中頃にイギリスで製作されたその椅子は、学校やオフィス、一般家庭で広く親しまれた。日用品とはまさに、使い続けられることが価値と言えるだろう。

思い返せば、私が住む人という冊子を作るようになった過程には、「継続」「持続」といったテーマがあった。これはGITAKUが100年住み続ける家をテーマにしていたことに加え、私が柳宗悦の民芸運動に興味を持って思春期を過ごしたとで、使い良い物を使い続けることが人生の重要テーマだと考えていたことに、関係しているだろう。

人は100年先を見ることはできない。けれど、100年とその先を思い描いた人が作り使った物は、自然とまた同じ想いを持った人の手に渡り、受け継がれていくことを信じている。私が買った椅子は、1950年代の椅子だった。さほど特別な代物では到底ないけれど、いい椅子だった。

きっとこのWEBコラムをいつも読みにくる方は、そんな感覚を、お持ちの方なのではないだろうか。そんな人が日本に、一人でも増えたら素晴らしいと思う。

住む人編集部

 

写真は、2100年代の人々に民芸と言われていたら嬉しい、私の日用品。