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便り3 福岡から

カテゴリ : 住む人日記 2019.04.04

4月1日の朝7時半、羽田から福岡へ。あちらこちらで、新品の黒いスーツにベージュのコートを羽織った集団に出くわします。新人研修なのか、まだ大学生の顔のまま、でも少し緊張した面持ちです。そんな新年度は、月曜日からの始まりで心地いい。

福岡に降り立つと、市内でスタイリストさんと合流し昼食のため定食屋へ。時刻はちょうど11時半。なんだか店中がそわそわしている。注文を取るお母さんもどこか「まだかい?」とお客に聞いて、どこか上の空。ケータイを取り出したほとんど全ての人が、ニュースの生中継を見ていた気がする。

私たちも、運ばれてきた白身魚フライ定食やアジフライ、メンチカツをよそ目に、じっと画面に見いる。11時40分頃、官房長官が現れると静かに「令和」と書かれた額を掲げると「へぇ〜』と実感のこもらない声が漏れた。みんなでソワソワ、ドキドキして小さな画面を覗き込んだわりには華のない歓声が少し滑稽で、なんだかクスッと笑えた。でもそれが、かえって忘れられない1日になった気がする。

小さな声で復唱しみてみる「令和」は凛とした美しい響きで私は結構好きだ。その意味を「命令」「法令」という言葉と絡めて深読みをする人もいるけれど、神の詔という意味があることも忘れてはならないし、出典に登場する梅の花は三千世界(人や霊界などあらゆるものが混在する現世を表す言葉)に一度だけ咲く美しい花でもあるのだ。

令和の未来は、漢字から連想される意味の呪縛ではなく、きっと私たちの心持ちと振る舞いが担っている。元号の選定過程や選考人について詮索するより、もっと大切なことがあるはずだ。現場に向かう途中、元寇(モンゴル襲来)で築かれた防塁跡に、美しく咲いていた。
大きな樹の下で、夕焼けとともに桜を眺める人々の背中を眺め、今日この一日をまずは頑張ろうと思うのだった。

編集部 K.H

 

写真は、着陸間際の福岡市上空と定食や近くの景色。それと最終日に夕日。