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美味しいが、教えてくれること。

カテゴリ : 住む人日記 2017.10.11

街を歩けば、金木犀のあの香りが漂っている。朝晩の冷え込みのわりに暑い日中の憂鬱をも、紛らわしてくれる。そんなことを思っていると、もう10月も半ばに。つい先日、『住む人』第2号が校了し、今日から印刷所ではページが刷られ、乾燥、製本と進んでいく。創刊号から10ヶ月、今回は「食べること」がテーマ。住まいという箱の中で、一に睡眠、二に食事、私たちは準備に後片付けも含めたら、多くの時間を食べることに費やしている。起きている時間に限定すれば、一番と言っても過言ではない。

当たり前のようだが、改めて考えるとハッとする。私も一冊を編んでいく過程で、再認識し実感したことだった。家族が2人であろうと4人であろうと、食べることに退屈する家は人が集わず、どこか閑散としてしまう。その反対に、食べることが充実していれば人は自然と集い、長い時間を過ごし、その空間に愛着を持つようになる。

献立を毎日考えせっせと準備する大変さ。家庭の味に隠された愛情や工夫の存在。面倒な後片付け。人生の先輩たちはどのように、「食べること」と向き合っているのだろう。美味しいものに、家族が少し欲張りになることで、様々なことが日々、変化していくのではないだろうか。

ある人は、共に台所に立つことで。
ある人は、子供の誕生をきっかけに。
ある人は、食を考え、文字にすることで。

美味しいという体験は、腹におさまりすっかり消えてしまう。拘りの設計や洒落たインテリアのように、目に見える存在として居残ることはないけれど、そのかわり住まいと家族の記憶に刻まれていく。そんな思いを持って、15日から発売。オンラインストアも開設予定です。

 

住む人編集部