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街並みに、緑をしつらえる。

カテゴリ : お山生活 2017.10.06

先日、気になっていた造園家の話を聞ける機会があった。
造園家 荻野寿也氏の作る庭には、日本ならではの原風景がある。
彼の作風は、作っていないようで作っている庭を好み、
庭を作る時、しばし図面の中で生活をしながら
庭の樹木のプランを考えるのだそう。
建物と庭を考えるとき、彼は断面から想像していく。
高木中木低木を落葉主体に、
花は季節をずらして、グランドカバーも考える。
極力野性っぽく、もともとのグランドラインを生かしていく。
素敵だなと思った彼の言葉は、
「もともと、ここに木があったかのように、
建築は遠慮して建てた雰囲気にする。」ということ。
そして、建築家の横内氏が、荻野氏が言った言葉として
「彼は、造園とは、街を森に戻していく仕事だと言った」と
話しているのを聞き、強く心を打った。

もちろん、自然に優る人口はないのだけれども、
その街が何で形成されていたのかを考え、そこから使う素材も
決めていくそうで、やはり彼の話を聞きに来てよかったと思う。

以前に、このコラムで書いたことと同じですが、荻野氏もまた
「外庭は、街に緑を提供する場です。」
と話していました。

建築と植栽の設計手法についての、建築家と造園家による
プレゼンとクロストークは、非常に価値あるもので共感することも多く、
家を建てる際、それぞれの立場の人間が、少しでも意識をしていくことで、
街並みは少しずつ変わるのだろうと改めて感じる。

虫が嫌い、庭の手入れが面倒。時間がない。
特に忙しい世代には、いろいろな理由があると思う。
でも、その少しの負担をそれぞれが担うことで、
その地域が美しくなるとしたら、価値が上がるとしたら、どうだろうか?
住民一人一人が、街並みに緑をしつらえていけば、
その街は、確実に豊かな空間になると私は信じている。
街路樹を、落ち葉が落ちるから切ってほしいという、悲しい言葉も
少しでも無くなっていかないだろうか。
私も家と街を繋ぐ仕事を、もっともっと深く学ばなければと強く思う
そんな素敵な機会でした。