SUMIBITO

1984年の本を読んで

カテゴリ : 住む人日記 2017.05.20

先日、谷川俊太郎さんの『詩めくり』という、1984年に刊行された本を買いました。
366日に渡って綴られた詩は活版印刷ならではの微妙なスレや版の位置ズレからか、現在の本にはない人間味のようなものを感じる、より奥深みのある装丁になっていました。

今年で86歳を迎える谷川さんが52歳の頃に書かれた詩には、広告コピーのようなリズムと響の良さが、でもそこに数滴の毒のも混じっている。
その面白さにページが進むに連れピリッとしたり、クスッとしたり、やがてふと感じることがありました。
もしかすると、この本は現代の印刷技術で真っ黒く、くっきりした文字で仕上げられていたら猛毒になっていたかもしれない。
インクと活版の微妙なニュアンスが、詩の内容を時に引き立て、中和し、効果的ではないか。

ただこれは、当時は活版しかなかったので当然狙ったわけではいないし、今と昔を対比することでしか、発見できない。
新しい時代、新しい技術はどんどんやってきます。その素晴らしいと分かった上で過去のより良い表現を選べることも、現代人の特権かもしれません。

勿論、詩の良さも抜群なのですが、なんともマニアックな視点から、別のことを考えるキッカケになったのでした。
今と昔の適切な関係性を考えることは、GITAKUの家づくりの考え方にも通じるものがあるかもしれません。

新しさだけが、素晴らしさではない。

住む人編集部

 

 

 

 

 

 

 

著:谷川俊太郎『詩めくり』