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とるにたらない。なんてことない。物。

カテゴリ : 住む人日記 2017.05.30

先日、柳本浩市展”アーキヴィストー 柳本さんが残してくれたもの”を観に行きました。(自由が丘six factory 12:00-18:00  6月4日まで)

伝説的で超人的なコレクターとして知られ、Casa BRUTUSやecocoloなど様々な媒体にも登場していた柳本さん。

海外のスーパーマケーットの商品パッケージから百貨店の包装紙、エアラインの印刷物、ガムの包み紙、洗剤や歯磨き粉、医療品の類、あるいはオリンピック関連の様々な物や北欧ヴィンテージといった、有名・無名を問わず多岐にわたる収集品は50億点とも言われていました。

今回の展覧会は、協賛の良品計画が提供する無印良品のアルミ製のラックに、ここぞとばかりにコレクションの数々がジャンルごとに陳列され、同時に棚に並んだ大量のスクラップブックを手袋さえはめれば、誰もが全てを見ることができる、まさに柳本さんの知識と見識の深さを垣間みるというものでした。

そこにある全てが一見、とるにたらない、なんてことのない物のようでした。似たようなデザインや目を凝らさなければ判別できないほど些細な違いしかないものなど、そのほとんどは、普通の人にとってはすぐゴミ箱行きになってしまう物かもしれません。

しかし、柳本さんの手に留め置かれたそれらは確実に、時代や国柄、社会背景など様々な文脈の中から人の手によって生み出された物たちでした。注意深く見ていくと、「過去が生んだ今が、目の前にある」そう再認識させられるようでした。

展示品の合間に置かれた紙には、

「ものは突然生まれてくることはありません。過去から続く文脈の中から環境や情勢をその時々のタイミングで加えて生まれてきます。」(引用ママ)

そう記されていました。

私たちは生きていると、当たり前の事実ほど見落としてしまう。それでは、いけないのだ。展示された遺品は、そう語りかけているようでした。柳本さんが46歳の早過ぎる生涯に幕を下ろして、1年。沢山の人が、これからも膨大な遺品から学び、価値やあり方を文脈的に考え、新しい何かを生み出していくような気がします。

私も、とるにたらない、なんてことない、そんな物からも価値を発見していきたい。そう思いました。興味のあるかたは、是非足を運んでみてください。

 

住む人編集部