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明るい家

カテゴリ : 波の音 2017.03.05

物心ついた時、実家は既に一軒家だった。
両親は結婚して私が生まれて少しの間、アパート暮らしをしていたそうだ。
その後、鎌倉に土地を買い、注文住宅で家を建てた。
覚えているのは、当時としてはなんともアバンギャルド的な家の作りで道路側から見ると横長い箱型の2階建。正面には一階から二階まで繋がる大きなはめ殺しの窓が全面的に付いていた。家の目の前は公園なので公園から見ると家の中がかなり見えていたと思う。今思い返しても、当時そんなに大きな窓が壁一面についていた家はなかったと思う。外壁の色はブルーだった。

そんな不思議な家は、私が中学2年の時に建て替えることとなった。
次なる家は北欧の輸入住宅だった。今では日本から撤退してしまったN社のその家はやはりあまり周りに見ない雪国の家だった。
最初の家が外から中が見えるオープン的な感じだったからなのか、今度の家は外から中がまるで見えない作りだった。

木造住宅で、木のぬくもりを感じられるその家は心地よい住みごごちだったが唯一私が嫌だったのは、家の中がとにかく暗かった事だ。1階のリビングは昼間でも明かりが必要だった。外は良い天気で、目の前の公園からは子供達の楽しげな遊び声が聞こえてくるのに家の中はどんより暗いというのは、あまり気持ちの良いものではなかった。

だから、明るい家というものにいつも憧れがあった。
自分で決める家は、賃貸、持ち家に関わらず明るい家にしたい。

でも明るい家ってなんだろう。ただ太陽光を窓から取り入れれば良いのだろうか。今借りている家は、南東向きのリビングで、1階から2階まで吹き抜けになっている。1階部分には大きな掃き出し窓(下端が床と同じ高さになっている窓)で2階部分は大きなはめ殺しの窓が付いている。南東の一部分の壁が全面ガラス窓なのでとにかく明るくて気持ちが良い。まさに自分の求めている明るい家だ。

ただ、ここを借りて5年目になるが、ただ太陽光が入ってくれば良いということではないと思い始めている。冬の日差しは暖かくて気持ちがよいのだが、真夏はブラインドカーテン無しではとても過ごすことができない。箱型のこの家は軒がないので直に真夏の太陽光が家の中に注がれる。だから、大きな窓があり三浦半島を見渡せるこの家の魅力は夏には半減してしまう。

家の本を幾つか読んでいて見つけたのだが、「徒然草」の中にこんな一節があるそうだ。

「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居は、堪へ難きことなり。」

だからもし家を建てる事があったなら、そんな事も考えながら建築家の方と家を作っていきたい。私が考える明るい家ってこんな感じだろうか。

・夏涼しく冬暖かい、窓が大きな明るい家
(太陽光を直接取り入れなくても良い)
・家族が自然とリビングに集まり話が弾む
・家の中と外に一体感があり自然を感じられる
・家の中でも植物が元気に育つ
・子供の楽しげな息遣いが感じられる

ただ物質的に明るいだけではなく、そこに住まう人・物が気持ち良くそこに佇む家。家族が笑顔で笑いの絶えない生活ができる家。

そんな明るい家に住みたいと思っている。