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名優去る

カテゴリ : 住む人日記 2018.09.20

平成の終わり、今年は時代を代表する多くの著名人がこの世を去る年のようですね。「歳を重ねる」をテーマにした住む人の取材でも、家族や友人の死を経た方のお話を聞く機会もありました。私自身も今年は親しくしていた方を二人亡くしました。生きているものは、遅かれ早かれ必ず死する。それは生まれると同時に全ての人に等しく与えられた運命なのだと思います。

私が幼い頃から大好きだった、樹木希林さんもまた、先日この世を去りました。長年の闘病も、運命の存在を頭では分かっていても、公の場で語られる言葉や振る舞いに触れる度、どこか不死鳥のように思っていました。さまざまな場で語られた達観した死生観は、きっと多くの若者や、行先が見えてきた世代の方にとっても心強いものだったのではないでしょうか。私も結婚や知人の死などを経て、これまでの無鉄砲が急に病に敏感になり、死を恐る感覚を抱くようになったこの頃、樹木さんの言葉に触れては勇気付けられたものでした。

今日、偶然にも撮影で訪れた幼稚園のお弁当の時間、子供たちが大きな声で「今日も元気な体で幼稚園に通わせてくれてありがとうございます」とお祈りをする姿を見ました。いくつになっても、そういう些細な感謝は、大切なのかもしれません。そんなことを感じながら作る住む人、どんな一冊になるでしょうか。もうしばし、お待ちください。

いつかお撮影の場で会いすることを心から願っていましたが、叶わなかった樹木さん。どうか天国で安らかにありますように。

 

住む人編集部