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文旦と春分の雪

カテゴリ : 住む人日記 2018.03.21

春分の日、東京では大粒の雪が空を舞っています。
先日、体調を崩して入院していた祖父が退院したと聞き、久々に実家に帰ると、祖父から丸々と太った文旦をもらった。

その色形はどことなく冬の名残感じさせるのに、
甘すぎない爽やかな香りと少しぼんやりとした酸味は、どこか春らしい。
ちょうど春分といった佇まいが、地味なのに可愛らしい。
欲を言えば、眠たくなるような春の暖かな風に吹かれながら、
その実をひとつふたつと、頬張りたかった。
きっともうすぐ、雪は雨に変わることでしょう。
だって今日から本当に、春なのだから。

心配して帰ったのに、心配をされて帰るのが実家。
家族というのは、離れてみると、分かることばかり。
あんなに厳しかった祖父は、実はいちばん私に甘い。

祖父もきっと今ごろ、文旦を食べて、
ぼんやりとした甘さを、感じているだろうか。
いや、種が多いとぼやいているかもしれない。

元気に歳を、重ねてほしいものだ。

住む人編集部