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銀座松屋 手仕事見本市

カテゴリ : 住む人日記 2017.09.30

去る夏、三重県四日市に行く機会がありました。
住む人や、技拓のカタログなどでもアートディレクターをしてくれている杉本さんも一緒です。
四日市といえばコンビナートからもくもくと煙が登る工業地帯を思い出す方も多いかもしれませんが、
「急須と言ったら、常滑か萬古」と古くから言われるっ焼き物の名産地でもあります。

私と杉本さんは、その萬古焼きの窯元である南景製陶園さんを尋ねました。
萬古焼きそもそもが、明治に起こったために歴史は浅いものの、70年以上の歴史を持つ南景さん。
その急須は、よく焼き締められた黒くてマットな質感が特徴で、何と言っても、そのたおやかな表情のしつらえが魅力です。その他にも湯飲みや器など、民芸のように、削ぎ落とされたシンプルさが際立つ物がたくさんあります。

それらを職人たちは、細かな作業を手に覚え込ませて一つ一つ素早いながら、丹念に仕上げていきます。
今の時代、指の形が変形し、首や腰が伸びなくなってもなお、生涯をその仕事に捧げ、鍛錬に鍛錬を重ねる人はどれほどいるでしょう。それは時代遅れな働き方だからと言うことではなく、私たちが何か大切なことを忘れているからなのかもしれません。

安価な大量生産品を選んで買うのも現代人であり、大変な仕事を選ばないのも現代人です。
安くて早くて簡単が当たり前になり、多様化と情報化が進んだ今となって、私たちは手間と労力、鍛錬と継続の存在意義に疎くなってしまったのかもしれません。

本当に質の良い暮らしをするには、継続というある程度の長い道のりが必要です。良いものを作るにもまた、当たり前に経験と労力を要する。その体験をしながら本当の意味で自分のものにしていく喜びに、敏感になってもらえたら、と思うのです。
家を買う、建てる、そこにも同様のことが言えるかもしれません。

9/27-10/2まで、そんな南景さんは、銀座松屋での手仕事見本市に出展されています。この日に向けて、杉本さんと、リーフレットを作ったのでした。

 

住む人編集部 原田