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うつわと料理の関係

カテゴリ : お山生活 2017.03.16

「これをあなたにあげるわ」と言って、たまに食器をくれることがある母。
子どもの頃から母に、「食事は器でするもの」と言われて育ちました。
その意味は、料理を美味しく見せるのは食器であり、
器しだいでなんでもない料理も、高級店の料理も左右されるということ。

母は、子どもの頃から食べ方について大変厳しかったし、箸置きから始まり
食器を集めるのが好きな人で、食卓はいつもきちんとテーブルセッティングされていました。
季節に合わせ、行事に合わせ、自分なりのテーマを楽しんでいる人なので、
学生の頃にはちょっと買ってきたものを、そのまま食べては怒られて、すぐにお皿が用意されたことを、よく思い出します。

でも、大人になってその母の影響を受けている自分に気が付きます。
たとえ買ってきたお惣菜でも、料理に合わせて食器を選び、綺麗に盛り付けただけで、視覚的な味わいが変わるのは、確かであること。
逆に、たとえばどんなに美味しい料理でも、
その料理に合わないお皿を使えば、台無しになってしまう。
ましてやプラスチックのプレートのまま、食卓に出せば
美味しさは半減してしまうものです。


私は、たくさん持っているわけでも知識が豊富なわけではないけれど、
大きな柄の食器の使い方、洋食器に合う料理、白磁や青磁の美しさ、
古伊万里や九谷焼など色絵と料理の関係。
備前焼や萩焼きなどの素朴さとのバランスなど、
とても興味深い器の世界を、もっともっと愉しみたくなってきています。
母がしてきた、食卓を美しく楽しく美味しくする姿を見てきたので、
やはり同じ道を通るのだなと。

持っている食器は少ないけれど、自分なりに
どうしたら食卓が美味しく見えるか、そんな感覚を大切にしていると、
手の込んだ料理ができなくとも、食材の良さと色味と食器の使い方で
「食べる」という行為を大切にしていきたいなと、
久しぶりに実家で食事をして思うのでした。
そして、器と料理の関係から見てとれる、暮らしそのもの、
家という箱もそれに共通しているのだと、
建築の仕事をしていると、強く感じてくるのです。