マムシ谷の小さな家
カテゴリ : お山生活 2016.11.30
一昨年の初夏のこと。
我が家の猫が、1羽のメジロのヒナを咥えて帰ってきた。
我が家は、通称マムシ谷と呼ばれるお山に位置するので、
自分の家を「マムシ谷の小さな家」と名付けている。
ここは猫にとって、最高の遊び場。
この年は狩りを覚えたばかりで、狩りをした小鳥たちのお墓がいっぱい
できてしまった悲しい出来事の中、このヒナだけは無傷のままそっと咥えて戻ってきた。
前日の大嵐で巣から落ちたのだろうが、どこから拾ってきたのか
知るよしもなく、返す巣も知らず、
保護センターに連絡すると、七沢まで持って行くか巣立ちまで育てるか
どちらでもよいと言われた。
せっかくなら、生まれた山に返してやりたいと、
それから3ヵ月間野鳥の世話に奮闘することとなった。
だいたい巣立ちの時期すら、いつなのかもわからないし、
鳥をあまり可愛いと思わなかった私。
この濃密な3ヵ月間が、私をすっかり鳥好きにさせ、
巣立ちの日には嗚咽をするほど泣いた。
毎日、メジロと愛犬を連れて会社に出勤し、メジロは筋力をつけるため
オフィスを自由に飛び回った。
観葉植物と私の肩を行ったり来たりしながら、エサをねだる姿は
私を虜にさせた。
今思えば、巣立ちの時期はとうに過ぎていたはずなのに、
なかなか巣立ちをしなかったし、私も外の危険を思うと躊躇もした。
自宅をオフィスを自由に飛び回り、一度外に飛び出したものの
また建物に戻ってくるようなメジロだったから、
もう責任をもって飼おうと決めたその翌日に、
野生のメジロが3羽迎えに来て、一緒に山に戻ってしまった。
あの子との出会いは、脳裏の奥底まで鳴き声が染みついて忘れないほど、
私の人生の中で、大事な思い出になった。
大好きなメジロが巣立ってから、今年で2年目の冬。
我が家のエサやりの籠に、あの子らしき子がやってきた。
去年から、メジロのためのエサやり籠を冬だけ設置している。
ヒヨドリやカラスに食べられないよう、入り口を狭くして
メジロだけ出入り自由にしてやった。
みんな他の鳥を警戒して、エサをつまむとすぐに立ち去る。
または1羽が籠を上で見張り役をする。
そうして、たくさんのメジロたちが冬を越すためにやってきた。
今年も今月から吊るしてやると、随分と呑気なメジロが、
1羽だけ時々訪れるようになった。
どこか懐かしそうに、のんびりを食事をして外を眺めて5分ほど寛ぐ。
それを何度も繰り返すメジロ。
ひょっとすると、育て上げた大好きな「ピピ」ではないかと
私は密かに期待している。