SUMIBITO

食べかけへの愛、それから no.5

カテゴリ : 住む人日記 2019.08.10

先日、偶然ある媒体の取材で料理家さんにお会いしました。今日はその時の話を一つ。私が社会人になってから一番学びの多い取材だったように思います。

その方に、「味見をしても出来上がった料理がイマイチな時があるんです」と相談したところ、「それは何の味を見ているんだ?塩味、甘み?それによっても味見の感覚が全く変わる。味見とは、食べ物が一周回った先を想像して味を見ることが大切なんだ」とおっしゃりました。


この言葉を言われた時、本当にそうだ思ってしまいました。目の前の料理に対して、美味しいかどうか、味が薄くないか、濃すぎないかを見ていたのですが、それは、本来の味見ではない。確かにそうです。何を見ていたのでしょうか。見ているようで本当は何も見ていなかったのかもしれません。

その料理家さんは、料理とは想像するものだと言います。目の前の食材がどんな味をしているのか。これとこれを合わせることで、どんな味になるのか。野菜のゆで加減はどのくらいが良いのか。様々な想像が掛け合わされて、料理ができる。つまり、料理とはイマジネーションなんだと。

想像をする時のヒントになるのが、食材の声を聞くことだと、また別の料理家さんは教えてくれました。実際にその方の料理教室に参加した際、「まだかな〜、まだだって言ってるね」と野菜を対話していて、食材の声を聞くことも想像力なのだなと驚いた覚えがあります。身近なところにイマジネーションのヒントが隠れているということを学んだ出来事でした。

料理で鍛えられる想像力は、他の実生活にも必ず役に立つもの。
今日こそは料理をしたいと思いました。